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ゆゆの由々しき日々

桃のパフェ / フルーフ・デゥ・セゾン (末広町)

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秋葉原UDXの傍を歩いていると、左斜め後ろのほうから声を掛けられた。
「すごく美人な方ですね。」
ナンパだった。暑さが増した気がした。
普段あまり立ち寄らないエリアであるから分からないが、秋葉原でもナンパされることがあるのか、私は不意を突かれた。"そういうイメージ"の無い街だ。
「どこへ行くんですか?僕はカキ氷を食べたいなと思ってて…一緒にお茶しないですか?」
おい、カキ氷なのか、それともお茶なのか。
「私はパフェを食べに行きます…。お友だちと…待ち合わせをしておりますので…。」
友人との待ち合わせ時刻よりも30分以上も早く秋葉原駅に着いた私は、不案内な街で時間を持て余していた。普段であれば無視を決め込むところであるのだが、気がつけばそう受け答えをしていた。暇と暑さを紛らわしたかった。
立ち止まり、顔を隠すように日傘を傾けその隙間から怪訝そうに相手の様子を伺うと秋葉原の背景に溶け込んでしまいそうな男性の姿があった。秋葉原の街と同じように"そういうイメージ"を感じなかった。拍子抜けし、一気に警戒心が和らいだ私は日傘の角度を整える。

そもそも何故秋葉原というエリアでナンパなのか。どんな仕事をしている人なのだろうか。普段からいつもナンパをしている人なのだろうか。その勝率は?目的は?ナンパを始めたキッカケは?いくつ?どこ住み?カキ氷?それともお茶?
こんな機会は貴重だ、ここぞとばかりにナンパ師の生態を探りたくなった私は、まるでこちらがナンパ師であるかのように矢継ぎ早に質問攻めをする。
フルーフ・デゥ・セゾンの店の前まで着いてしまっていた。たまに行き交う人達が、こちらのほうを見て眉をひそめた。
彼は嫌な顔をせず、その一つ一つに対して丁寧に受け答えをし、ナンパの目的についてこう話す。
「変だと思われるかもしれませんが、僕、真面目に婚活をしているつもりなんです。」
秋葉原の街が眩しかった。

さっきね、あなたと会う前にこんなことがあったの、ついそこの店の前でね、なんだか不思議だったよ。
桃のパフェをオーダーし、友人に先ほどのナンパ師の話をすると、友人は
「なるほど、ミステリーを感じたんですね。」
と言って笑った。